おにぎりの値段をいくらにするかは本当に悩みました【実際の価格】

おにぎり屋開業の事業計画書を作成する中で、とりあえずのコンセプトは完成したわけですが。次は、いよいよおにぎりの値段について考えていきました。

このとき参考にしたのは、首都圏を中心に展開している「おむすび権米衛」というお店です。僕がおにぎり屋を始めることになったきっかけ、それもこの「おむすび権米衛」というおにぎり屋の存在だったわけですが。商品の価格を付けることがいかに難しいか、このときはじめて知ることになったのです。

低価格業界の慣習が染みついていた

まず、僕が当時のおにぎりの値段設定について語るうえで重要なこととして。僕のバックボーンといいますか過去の経験について手短にお伝えします。

おにぎり屋を開業する以前。僕は「給食弁当業界」という、低価格が一般化している法人向けの弁当業界にいました。僕を含め、家族4人で創業した会社です。当時、僕の地元である給食弁当の相場は1食当たり350円。ご飯とおかず、そして配達も付いてこの値段です。

当時配送していた350円のお弁当です

この給食弁当業界というのは面白いもので。基本どこに営業に言っても「もうちょっと値下げできないの?」「もうあと10円下げてくれたら考えてもいいよ」そんな交渉が当たり前に行われていました。350円でしかも配達まで行う弁当なのに、まだそこから10円や20円を値切ってくるという。そんな業界です。

皆が似たり寄ったりの弁当の内容(冷凍食品や既製品)で、どこの業者もマーケティングやブランド化など一切考えておらず。交渉の場では必ず値切りが行われていました。契約を勝ち取れたとしても当然利益にならないような取引ばかり。みな、とにかく弁当の数を取りたい、売上を取りたい、そうすれば上手くいくだろう。今思えば皆がそのように考えていたのだろうと思います。

嘘のように聞こえるかもしれませんが、本当にそんな業界でした(汗)およそ、どこの会社もそろって経営戦略と呼べるようなものは持ち合わせていないわけです。それが証拠に、それまで必死になって値下げをして契約を取っていた(実際に取れていた)会社が、消費税が5%から8%にアップした年にあっさりと倒産したりもしていました。

もちろん、僕たちの弁当屋も同じような価格設定ではありましたが。運よく家族経営だったということもあり、長時間労働の元、ある程度利益が確保できる状態だったためなんとか持ち越すことが出来ていたわけです。今は若干変わってきてはいますが、似たような状態は続いています。といったように。僕はそのような低価格が常態化している業界に長く身を置いていたことから、その業界の慣習が身体に染みついてしまっていたのです。

提供する側とされる側での矛盾

僕は当時から、コンビニなどでおにぎりを購入して食べていました。ローソンの「ちょっと高級なおにぎりシリーズ(海苔がもともと巻かれてパッケージングされてるやつ)」が好きで。「なんちゃら鮭ハラスおにぎり」なんかは、たしか200円は超えていたんじゃないかと記憶していますが、それも普通に購入して食べていたのを覚えています。

おにぎり屋を始める前にも、偵察がてら東京に足を運んで「おむすび権米衛」や「ほんのり屋」その他のおにぎり屋にも足を運び。そこでも150円180円するおにぎりを普通に購入して食べました。「えーっ、高すぎだろ」とか思うこともなく、販売されている値段に抵抗も感じることもなく、食べたいおにぎりを購入しては普通においしく食べさせてもらっていたわけです。

そうやって、自分自身は200円近いおにぎりを食べているのに、いざ自分がおにぎりを売る側になり値段をつけようとすると、給食弁当業界で染みついた値段の感覚が邪魔をします。当時一番小さいサイズのお弁当が330円、仮におにぎり1個180円だったら2個で弁当の値段を超えてしまうんだよなー、どうしようやっぱり高すぎるかな。こんな感じです。

一見矛盾しているように思われますが、提供する場合と提供される場合とでは、同じ価値のものだと感じたとしても値段を同じに出来ないのです。経営センスがないと言われればそれまでですが。おにぎりの値段を決める上で、この感覚がすごく邪魔をしたことを覚えています。

実際いくらに設定したのか?

では、実際におにぎりの値段をいくらにしたのかというと。まさかの、当時のコンビニと同じような値段です。

【おにぎり】
  • 塩:110円
  • えび天:150円
  • なす天:130円
  • たこ天:130円
  • 焼き鮭:130円
  • 焼きたらこ:130円
  • おかか:130円
  • ポテコロ:130円
  • 味噌カツ:130円
  • 梅干し:130円
  • 白身天:130円
  • 肉味噌:130円
  • ごま昆布:130円
  • ごま唐:130円
  • 鶏五目:130円
  • ツナマヨ:130円

【サイドメニュー】

  • サイコロエッグ:200円
  • 唐揚げ(3個):200円
  • 唐揚げ(5個):300円
  • 焼き稲荷:280円

当時「これでいこう」と決定したコンセプトをもう一度確認してみます↓仮に、このコンセプト通りにおにぎりの値段を決めるとすれば、それなりの値段をつける必要がありました。

天然素材・添加物不使用ということを考えれば当たり前に原価は高くなるし。バラエティ豊富となると、在庫管理の手間もかかり、その分の管理費も掛かってくるわけですから。仮に、原価積み立て方式で計算するならば、最低でも上記のおにぎりの値段よりも倍の値段に設定しないと、商売が成り立たないのは当たり前の事実です。ですが、やはり給食弁当業界という低価格市場の業界に長くいたことが邪魔をする。俗に言う大衆的価格以上の値段をつけることは、当時の僕にとってはどうやっても無理なことだったのです。

自分自身が天然素材・添加物不使用の食材・飲食店を利用するときであれば、しっかりとその対価を支払うことが出来ていたのに。いざ自分が提供する側の立場になると、なぜか分からないけど同じような価格設定をすることに躊躇してしまう。僕自身、おにぎり屋開業当時はもうすでに天然素材・添加物不使用の消費者ではありましたが、それらを提供する側ではありませんでした。そのため、そういった価値観を持った人、対価をしっかりと支払ってくれる人に直に触れる経験がなかったせいか。やはり、それまで長く浸かっていた慣習からは逃れられなかったのだと推測します。結局、当時の僕は事業者としてそれを反映した値段をつけることが出来なかったのです。

最終的に、このとき立てたおにぎりの価格から10円20円ほど上乗せた価格にておにぎり屋を開業することになりました。

国金の融資は下りたのか?

以上、ざっくり覚えている範囲ではありますが、僕の人生はじめての事業計画書づくりの裏側を少しばかりではありますがお伝えしました。では、実際国金の融資は下りたのか?結果的に、国金の融資は獲得できませんでした。信用保証協会を通した地銀の融資も軽くお断りされました(笑)まあ素人が考えた計画ですから降りる方がおかしいのですけれど。結局僕は個人ローンというカタチでいわゆるサラ金に借りて足りない資金を確保したわけです。

正直、もうこの時点でおにぎり屋が上手くいくことはないという未来は見えていたんです。今振り返ってみても、思い出すだけで背筋がゾッと凍り付きます。「何をやってたんだ過去の俺は」ここから約6年間、無知とは本当に怖いものだと思い知らされていくわけです。