おにぎり屋の年収は?リアルな収支構造をもとに分析

おにぎり屋をやってみたい。でも、気になるのは「それで生活していけるのか?」という現実的な問題。つまりはおにぎり屋の年収です。

理想と現実との葛藤で足が止まってしまうおにぎり屋開業希望者の方も少なくないと思います。

この記事では、僕の6年間のおにぎり屋経営の経験をもとに、おにぎり屋の年収について掘り下げてみたいと思います。

【収益構造の基本】売上とコストのバランス

商売の基本は、

「売上」-「原価・経費」=「利益」

では、おにぎり屋の場合、何にどれくらいコストがかかるのか?

主な内訳はこんな感じです↓

  • 食材原価(米・具材・包装など):30〜35%
    -お米の価格はおにぎりの原価を左右するうえで多くを占めます
  • 人件費(自分を含めた労働代):25〜30%
    -飲食経営はFLコストと言われるほど、Labor cost(レイバーコスト=人件費)は食材原価と並んで多くのコストを占めます。
  • 家賃・水道光熱費などの固定費:10〜15%
    -自宅開業やその他やり方次第で家賃比率は大きく変わります。固定的に掛かる費用なので、家賃比率が5%下げられるだけでも、そっくり利益となります。
  • その他(販促・雑費・予備費など):5〜10%
    -マーケティング経験がなければ、恒常的に広告宣伝費の費用対効果を上げるのは難しい。出来るだけ広告費を掛けずに出来る施策が必要です。

売上からこれらコストを差し引いて残るのが「営業利益」。この営業利益が、いわゆる「本業の利益」と言われるもので、ここがおにぎり屋としての「儲け」となるわけです。

【実例】とある1日のモデルケース

仮に、以下の条件で営業したとします。法人ではなく個人事業主としての開業です。

何を隠そう、僕がおにぎり屋を開業した当時の記録を基にした数字です。実際にはサイドメニューなども販売していたので正確な数字とは若干異なりますが、ここではあくまで簡単にお伝えしてみます。

  • 営業時間:10:00〜14:00(6時間営業)
  • 販売個数:1日120個
    -おにぎりの単品販売のみ
  • 平均単価:180円
    -下は110円から上は230円、総売上から販売個数を割った平均

売上は「21,600円/日」。仮に営業日数を月25日(※月曜定休)とすると、 月商で約54万円。土日祝日は平日の1.5~2倍は見込めるのでその点を考慮して約75万円としましょう。

ここからコストを差し引くと…

  • 原価(40%):約30万円
    -原価35%設定でも売れ残りがあると原価はおのずと高くなります。予想が外れすぎると、下手すれば50%近くを計上する月もあったり
  • 人件費(1名×時給1,000円×4h×25日):約10万円
    -毎日4時間勤務のパートさん雇用を想定
  • 家賃・光熱費:11万円
    -この額でおさめられるかが重要
  • その他固定費:5万円
    -人件費以外にもその他固定的に掛かる費用は案外多く、常に無駄な費用が掛かっていないかの判断が必要

最終的に残った数字は19万円ほど。これが事業所得といって事業主の取り分つまり給与となり、単純に自分自身がひと月働いて得た給与は19万円となります。これを単純に年収にすると228万円。

19万円×12月=228万円

借入元本返済や国保年金などの支払いはこの19万円から支払います。そうして最終的に残った取り分が可処分所得ということになります。

仮に、設備が壊れて修繕費を払ったり思ったような売上が上がらなければ、これよりさらにおにぎり屋としての年収は少なくなるわけです。

あるいは、人を雇わずに自分一人で回せるのであれば、単純に人件費はひと月当たり10万円は浮く=その分は自分の給与に反映されるわけです。

【損益分岐点】いくら売れば“赤字を抜ける”のか?

先にお伝えしたのはあくまで結果から判断した事実。

これからおにぎり屋を開業するためには、予めいくらほどの売上が必要かの判断基準が必要です。

そこで必要となるのが損益分岐点、どれだけの売上が上がればひとまず安心できるのか。赤字でもない黒字でもないトントンの状態、つまりは売上から変動費(原価)を差し引いた残りが毎月の固定費と同じになる点を見つけます。

この考え方は管理会計といって、個人事業主だとしても自分の給与分を人件費(固定費)として考えます

おにぎり屋の損益分岐点を計算するには、

固定費 ÷(1 − 変動費率)

例えば変動費ならびに固定費が下記の場合:

  • 家賃・光熱費・人件費など固定費が46万円
    自分の給与30万円・家賃光熱費11万円・その他5万円で計算
  • 変動費率(原価)が40%

損益分岐点売上:46万 ÷ (1 − 0.4) = 76.6万円

このケースの場合、月76万円以上売ってようやく“トントン”。この数字を「現実的に達成できるか?」を判断基準にすることが重要です。

【黒字化への道】“売る”より“残す”を重視する

損益分岐点の公式からも分かるように、単純に「売上を伸ばす」だけでは黒字にはなりません。むしろ、「売上を伸ばす」よりも以下の視点が必要です。

  • 人を雇わず、店主(自分)一人でも完結できる仕組み
    ※人件費は売上があってもなかっても掛かる固定的な費用。はじめは自分一人でやってみて自分の時間給くらい取れるようにはなっておく必要がある。
  • セット販売や高利益商品で原価を下げる
    -おにぎり屋だからといって、おにぎりの単品販売だけしかしてはいけないわけではない
  • 原価のかからない“味噌汁・箸休め”などを活用する
    原価の掛かるおにぎりとのセット販売が肝。より高い価値を提供できるにはどうすればいいか?
  • 廃棄ゼロ設計によるロス削減(原価率減)
    -作り置き販売はいかにロスを出さないかが重要。作り置きをしないというスタイルもあり

まずは「儲ける」ことよりも、「ちゃんと残す」ことを設計すること。そこがクリア出来てはじめて、”儲けること”に挑戦出来るからです。

【まとめ】おにぎり屋は“限界が見えている”からこそ設計を要する

おにぎり屋も他の飲食と同じで、労働集約的な部分が多いため「爆発的に儲かる」ビジネスではありません。むしろ、ある程度「限界が見えているからこそ設計を要する商売」なのです。

売上を上げるだけでなく利益を残すことを考える。

利益を残せなければお店は続けていけない。その現実を知ったうえで、まずは「自分に合ったやり方で、確実に生き残る」そこが達成できれば、おにぎり屋として次の挑戦ができる魅力的な商売に変貌をとげるわけです。