“おにぎり”を商品として考える必要があった【参考にしたのはOnigilly】

僕がおにぎり屋時代に事業者として最終的に辿り着いた「握らないおにぎり」という商品。

この”握らないおにぎり”という商品にたどり着いた理由は大きく2つあるのですが。一つは別のセクションでお伝えしている通り、商品としての提供価値を変えたかったからです。もう一つが、当セクションにてお伝えするオペレーション上の理由です。

この握らないおにぎりを採用するまでは、一般的なおにぎりと言いますか「手の内」で握るおにぎりを提供していたわけですが。当時は自分以外のパートさんが握ると、どうしても握りが均一にならないことに頭を抱えていたのです。

そこで、だれが作っても握りが均一になるようにと、オペレーション的視点を取り入れることにより辿り着いたのが、この握らないおにぎりだったのです。

属人的であることでの問題

当時、「握らないおにぎり」を採用する以前。僕のほかに2人のパートの方におにぎりを握ってもらっていました。もちろん、このときはまだ手の内で握る一般的なおにぎりです。

ただ、このとき何がネックになっていたかというと、握り加減3人それぞれに異なるということです。若干おにぎりの形が異なることは良しとしても、握り加減が変わってしまうと食べたときの食感がまるで違ってしまうからです。

使ってるご飯・具材・海苔が同じなので、そうたいして変わらないと考えるのは大間違いで、この握り方ひとつで口に入れたときの食感はまるで違ってしまいます。

当然、人間一人一人の握力も異なるし、普段自分が握っているおにぎりの握り具合が一番美味しいとも思われているわけで。

「もう少し弱めに握ってみてください」

そうお伝えしても、どうしてもその感覚を完全に再現することは出来なかったのです。

自分一人でやっているときは、当たり前ですけどこのような問題はありませんでした。ですが、やはり自分以外の方とその感覚を同じにするのは簡単なことではなかったのです。

「そのような違いも店のウリの一つではないか」はじめのうちは、そうやってポジティブに考えていましたが。

「なんか最近ちょっと硬く握ってるね。以前のホロッと崩れる方が好きかな。」

それまで足しげく通ってくれていた常連さんからそのような声を聴いてしまうと、見逃すわけにはいかなくなるわけです。

「そうか、ある一定以上のクオリティを確保できていれば、そこからは握り手の違いが良い効果を生むのかもしれない。だけど一定のクオリティが確保されていない今の状態では、握り手の違いがそのままお客さんのストレスになってしまうんかもな」

そんなことを考えるわけです。

属人的にやることで良い面はあるけれど、一方で悪い面もある。このときはじめて、事業者としてオペレーションという意識が芽生えたのです。

多少の美味しさは犠牲にしてでも

今まで属人的にやることしか頭になかったわけですが。商品開発というものを少しばかり勉強するようになったことで、オペレーションという概念をもつことの大切さに気付きます。

事業者としておにぎり屋を営むわけですから、本来はじめからこのオペレーションという視点が必要だったわけですが、ようやくここで芽生えるわけです。

それまでは、「自分が求める美味しさ一点」。その視点のみをもっておにぎりづくりに励んでいましたが。ここから「美味しさ」と「オペレーション」の両軸でお店のおにぎりを考える視点、つまり商品としてのおにぎりを考えるようになったのです。

「多少の美味しさは犠牲にしてでも、誰が握っても同じになるようなおにぎり」美味しさとオペレーションのバランス。料理としてのおにぎりではなく商品としてのおにぎり、事業者として自分以外の方とお店を回していくためのおにぎりづくりという視点に切り替わったわけです。

そのヒントを得るため、インターネットを使って色々なおにぎりの握り方を探索していきます。

  • よそのおにぎり屋さんはどんな感じで握っているのか?
  • おにぎりチェーン店であれば何かヒントを得られるはず。
  • ある程度お店として継続できてるようなおにぎり屋を参考にしなければ。

そんなことを考えながら様々なおにぎり屋を調査。そうこうしているうちに出会ったのが、当時海外(アメリカはサンフランシスコ)で2店舗ほど経営しておられていた「Onigilly」というおにぎり屋です。現在は6店舗ほどに拡大しているようです。

お店の紹介動画か何かとしてyoutubeにアップされていた動画。その動画の中で、実際におにぎりを握っている場面も映っており、それを見て盗んだといいますか採用させていただいたくことになったわけです。

営利の事業者という立場

この「握らないおにぎり」を採用することにより、それまでの属人的だったおにぎりづくりは一気に仕組化されました。

パテを作り続ける人、具材を載せる人、海苔を巻いていく人。そうやって役割を分けることで、1分あたりに作ることができるおにぎりの数も明らかに多くなります。採用できる具材も幅が広がります。

特にとんかつや玉子焼きなど、固形の食材を採用することもできるため普通のおにぎり屋とは異なったスタイルにできます。興味があれば最後のセクションでおまけとしてレクチャーするので挑戦してみてください。

「これはおにぎりではないだろう」

この握らなおにぎりに関しては、たしかに葛藤も覚えました。ただし、当時は事業的に利益を出すことや仕組化することも経営の一つだといった認識が芽生えたことの方が強く。「美味しさとオペレーションのバランス」この視点は絶対に変えられないと覚悟を決めていたため、推し進めることが出来たわけです。

美味しいおにぎりは、それこそ食材にこだわったり握り方にこだわれば、基本的に誰でも作ることはできますが。事業者として利益を出すことや仕組化することが出来なければ、おにぎり屋という営利のお店を開く必要がないと考えたからです。

営利の事業者という立場であるのなら、おにぎりづくりに限らず料理と商品とを区別する必要がある。作品と商品とを区別する必要がある。

商品をつくる際には、必ずオペレーション的視点も考慮すること。その考えは、今こうしてお伝えしている現在も変わりありません。