自己資金として120万円は用意できるということが分かり、自己資金で賄えない残りの200万円程を用意する必要がありました。もちろんお伝えした”国金の融資”に頼ろうと考えたわけですが。
必要な設備と資金を見積もった後は、いよいよ事業計画書をつくっていきます。もちろん、人生ではじめての事業計画書づくり。
まずは近所の書店に行き「事業計画書の作り方」というそのまんまのタイトルの書籍を購入し、その通りに作っていきました。
創業する理由?
まずはじめに考えなければならないこととして書かれていたのは、「事業立ち上げの経緯」つまり創業の理由です。
数字ごとを考えるより先に
「なぜその事業を立ち上げるのか?」
当時の僕の場合だと
「なぜおにぎり屋をやるのか?」
そもそもどういった経緯で創業するのか、その理由が大切だということが書かれていました。
「たしかにそうだな」と共感をしつつ。当時の僕の中ではそんな視点からおにぎり屋開業を考えてなかったため、ある意味で新鮮な気持ちになったことを覚えています。20代初期の頃になんとなく読んでいた松下幸之助氏のことが頭によぎりました。
当時、僕がおにぎり屋を始めようと思ったきっかけは、単に「おにぎり屋だったら自分でも出来そうだな」といった、なんの情熱もない単純な理由だったため。改めて開業の理由を考えることは僕にとって新鮮な事だったのです。
「商売をするからには、相手に対して何かしらの価値を提供する必要がある。その対価としてのお金」という言葉に感化され、その価値を具体化させるうえでも
「誰に対して価値を提供してお金をいただくか?」
といった、ある意味で事業活動する者にとって当たり前のことを当時の自分の中で明確にしていきました。
実を言うと、ちょうどこのころ読んだ「食」の本に刺激を受けたことで、僕なりのおにぎり屋像というものが少しづつ形成されていたのです。たしかに薄っすらとではありましたが「食」についての僕の価値観は、その本を読む前と後では確実に変化したことを覚えています。
と同時に、時を同じくして読んだまた別の本からも刺激を受けており。
「お金を儲けることは悪だ」
といった価値観までも生まれてしまい、頭の中が少々パニックを起こしていたと記憶しています。そんなこんなで、なんとかそれらしい「事業立ち上げの経緯」を完成させていきました。

事業立ち上げの経緯
いま、ぼくたちが普段から口にするコンビニ弁当、スーパーの総菜などの加工食品、調理済み食品には、ほとんど100%と言っていいほど食品添加物が含まれています。
添加物を使用することで、弁当、総菜、加工食品などの賞味期限を延ばすことが出来たり、変色を防いだりと、売る側からすれば非常にメリットのあるもの(科学物質)です。
しかし、その反面、現在の死亡原因の上位であるガンや、小さな子供に増えている花粉症やアトピー、その他様々な病気が、添加物を含めた現代の食生活が原因であるとも言われています。
あるときは、発がん性のある物質が見つかったとの理由で突然、使用禁止になることもあり、まだまだその安全性についてはっきりと解明されていないのが現状です。
今まさに、僕たちが人体実験をしているという、非常に怖いことを言う専門家もいます。
僕自身、安全性が確認されてないいじょう、添加物は使用するべきではないと考えています。
そして、同じように添加物の危険性について関心をもつ人たちが、小さい子供をもつお母さんたちを中心に、少しづつ増えてきていることから、もう一度、「食」というものについて、真剣んに考えていかなければならないと思っています。
そういった背景があり、身体に優しい無添加のもの、そしてパンよりはるかに優れた栄養価の高い「お米」をもっともっとたくさん食べてもらい一つの予防医療として貢献できればと考えています。
それと同時に、米の自給率も高まり、農薬を使わない新鮮な野菜を使うことで、農業が活性化すれば、それこそ一番いい形だと思っています。
しかし、経営という視点から見れば「おにぎり専門店」というのは、実際難しいという意見もあり、ここ松山市でもまだ見かけることはありませんが、全国的に見れば少しづつ増えてきています。
それに、ただの「おにぎり」ではなく、無添加、無農薬に信念をもって取り組み、市場の調査。分析をしっかりと行っていけば、必ず新しい形態が確立できると考えています。
当時出会った書籍に影響を受けて、僕自身が世の健康ブームの真っ只中にいたわけで、それをそのまま反映したものになりました。
ただ、このとき自分で立てた事業立ち上げの経緯といいますか事業を行う目的。それが、後々自分自身を苦しめることになります。このときは、そんなことになるなんて夢にも思っていませんでしたが…。
コンセプトの重要さはすぐ理解できた
次に、どんなおにぎり屋にするのか、コンセプトについて考えていきました。
この当時は、まだ現在ほど人の価値観が多様化していなかったように思いますが。スマホが登場して世間を賑わせていたこともあり、そういった世の中の状況を見ていると、その後価値観が多様化していく兆候は十分に感じ取ることが出来ていました。
まあこれもそのとき読んだ本の受け売りですが(笑)そういった現状から、おにぎり屋開業に向けて「コンセプト」を明確にするといった考え方は、僕の中でしっくりハマりまったのです。

実は、おにぎり屋を始める前にも家族で給食弁当事業を創業しており。そのときはコンセプトなどといったものを考えたことは一度もありませんでしたが、資金と効率の面で市内にある大病院に絞って営業をかけた経験があります。
当時、僕らがやっていた手づくりの給食弁当は、既製品を多く使った同業他社とは一線を画し。同業他社の顧客層とは異なるお客さん(女性層)を獲得していけたため、創業後すぐに軌道に乗せることが出来ていました。

当時は、コンセプトなどといったことなどは一切意識してはいませんでしたが。そうやって、あとから実家の事業に当てはめて考えてみても自然にコンセプトが出来上がっていたため、コンセプトの重要さはすぐに理解できました。
僕が実際に考えたおにぎり屋のコンセプトは、当時読んだ本を参考にしながら自分に合わせたものに修正したものです。当時の自分の価値観と照らし合わせながら、とりあえずの基礎となるものを作っていきました。
【コンセプト】
【コアバリュー】・・・顧客に提供する価値の核心
毎日でも食べられるお米のおいしさと喜びを提供する
【パーソナリティ】・・・お店を象徴する人物の人格(個性)
・元気
・明るい
・笑顔
・真面目
・清潔
【ベネフィット】・・・顧客に提供する具体的な便益
・素材の美味しさを楽しめる
・安心して購入できる
・毎日食べても飽きない
【ファクト】・・・パーソナリティとベネフィットを実現するための仕組み
・天然素材
・添加物不使用
・低カロリー
・バラエティ豊富
・原料、原産地の開示
・作り手の顔が見える
どこかの本に書いてあるような(実際に真似をしている)一般的なありきたりのコンセプトではありますが、とりあえず形としてのコンセプトは完成しました。
コンセプトを現場実務まで落とし込めなかった
実際に当時のおにぎり屋時代を振り返ってみても、このコンセプト自体はそこまで悪くなかったと思っています。
「誰に対してのおにぎり屋か?」
と問われれば、「天然素材」や「添加物不使用」の単語からも分かるように。
「身体に気を使っている健康志向の人(女性)」
と判断することが出来ます。
手あたり次第、すべての人に合わせた価値を提供することなど個人のお店にとって簡単な事ではないため。コンセプトを明確に設定したことは価値あることだと考えています。
反省点としては。当時明確にしたコンセプトを実際の現場実務まで落とし込むことができなかったことで。実際に検証できなかったことが、僕が後悔していることの一つです。
立てたコンセプトをもとにお店の構造やり方を改善することが出来ていれば、また違った結果になっていたんだろうなー。まあ今となっては後の祭りです。
